障害医療Q&A
Q)抗てんかん薬の副作用について教えて下さい。
それぞれの薬にはいろいろな副作用があり、添付文書あるいは薬局から出される説明書を読んでも、「どれが重要で注意すべきか?」がわかりませんので、ポイントを教えて下さい。
A)
副作用は、①内臓・血液に関する症状、②脳に関する症状、③妊婦さんや授乳の際に生じる問題の、大きく3種類に区分されますが、ここでは①と②に関する、実際の診療の中でよく経験する副作用についてのみを下記の表に示します。内臓・血液における副作用は、症状の有無だけでなく定期的な血液・尿検査を受けることが重要です。また、脳に関する副作用については、日常生活における行動の変化などがあれば、主治医へただちに報告することが重要です。抗てんかん薬は長期間内服しますので、ご自身に適した薬を選択してもらい、副作用に日々悩まされることなく安心して治療を受けることが大事です。
【神経小児科・神経内科 根津 敦夫】
| 薬剤名 |
内臓・血液に関する副作用 |
脳に関する副作用 |
テグレトール・
テレスミン |
薬疹(ときに重症化します)
膠原病に似た症状(発熱・関節痛)
再生不良性貧血(難治な貧血)
バソプレシン分泌過剰症
(浮腫・尿が少ない) |
眠気 |
デパケン・セレニカ・
ハイセレニン |
肝障害・高アンモニア血症
(意識の低下)
腎臓障害(蛋白尿)
血小板減少(出血しやすい)
脱毛 |
食欲亢進
夜尿 |
フェノバール・
ルミナール |
あまりみない |
注意欠陥多動性障害
多量投与で呼吸減弱 |
アレビアチン・
ヒダントール |
歯肉の腫れ・出血
多毛
骨軟化症(骨折しやすい)
再生不良性貧血(難治な貧血) |
目のゆれ、めまい
無気力・不機嫌
小脳萎縮(ふるえ、ふらつき)
多量投与で吐き気 |
エクセグラン |
尿路結石(血尿、疼痛)
発汗減少(うつ熱) |
無気力・不機嫌
幻覚、妄想 |
マイスタン・ランドセン・
リボトリール |
よだれ、痰の増加
いびき、無呼吸 |
眠気、めまい
注意力・認知力低下
依存症(不眠、不安) |
ガバペン |
あまりみない |
眠気、めまい |
トピナ |
尿路結石(血尿、疼痛)
発汗減少(うつ熱) |
眠気、めまい
食欲減退
認知力低下・無気力 |
ラミクタール |
薬疹(ときに重症化します) |
めまい
興奮、不眠 |
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Q)難治てんかんの治療と生活指導について教えて下さい。
A)
難治てんかんとは、専門医による適切な治療を受けているにもかかわらず、発作が消失せず健全な社会生活が送れない状態をいいます。日常の主な問題点としては、①発作による溺水や転倒などの事故の可能性、②適応能力の低下やうつ状態などの精神症状、③治療費の負担、あるいは就学・就労が難しいなどの社会的不利、などがあります。②の原因としては、1)もともとの脳障害、2)てんかん発作による意識障害、3)薬の副作用などが考えられます。
難治てんかんは、発作の軽減だけでなく、常に②③の問題も念頭において治療されなければなりません。特に、抗てんかん薬の多剤併用による副作用の悪化には十分注意する必要があり、発作の完全消失を目ざすよりも、副作用による日常生活の困難さがないように治療を受けることが大事です。近年、新規抗てんかん薬が用いられるようになり、発作の改善をみていますが、新規抗てんかん薬が無効の場合には脳外科的治療を検討します。
難治てんかんの生活指導においては、発作を誘発する刺激を避けながら、できるだけ活動性を維持し積極的な生活をおくることが重要です。発作はボンヤリした状態で起きやすいので、規則正しい生活に心掛けて下さい。必要に応じてデイケア、職業訓練、作業療法などを受け、できるだけ社会参加を目ざしてください。発作による事故の中では、入浴中の溺水が最も危険ですので、浴槽の底にスベリ止めを置くことと、浅めに湯を入れることを徹底して下さい。
【神経小児科・神経内科 根津 敦夫】
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Q)新規抗てんかん薬の特徴を教えて下さい。
A)
日本でもすでにガバペン、トピナ、ラミクタールが処方されており、また2010年中にはイーケプラが処方可能となります。これらの新薬は、日本では主に難治てんかんに対する追加薬として用いられており、下記の表に示す有効性が認められています。
特にラミクタールの有効率は比較的高く、また抗てんかん薬の副作用としてみられやすい眠気や活動性の低下は少なく、逆に活発に日常生活をおくれることがしばしばみられます。それ以外の新薬もそれぞれ特徴を生かして使用することで大変役に立ちますので、薬の選び方についてはよく主治医とご相談下さい。
【神経小児科・神経内科 根津 敦夫】
| 薬剤名 |
発売年 |
有効なてんかん |
発作改善率 |
副作用 |
| ガバペン |
2006 |
部分てんかんの2次性強直発作 |
10~20% |
眠気、めまい |
| トピナ |
2007 |
部分てんかんの2次性強直発作
重症乳児ミオクロニーてんかん
レノックス症候群の失立発作 |
20~30% |
眠気、めまい
認知障害、食欲低下
尿路結石 |
| ラミクタール |
2008 |
部分てんかんの2次性強直発作
レノックス症候群の失立発作 |
約50% |
めまい
不機嫌、興奮、不眠
重症の薬疹 |
| イーケプラ |
2010 |
部分てんかんの単純部分発作、
複雑部分発作、2次性強直発作 |
約20% |
眠気、めまい |
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【Q】脳性麻痺のボツリヌス治療について教えて下さい。
【Q1】どのような効果がありますか?
【A1】
脳性麻痺では、強い筋肉の緊張状態(痙縮)による異常姿勢があるため、実際の運動麻痺以上に運動機能が強く障害されます。また、この痙縮が長期間続くと関節拘縮や骨格変形が生じます。ボツリヌス治療は、この痙縮を軽減して姿勢を改善させます。運動麻痺自体を直接よくすることはできませんが、痙縮の軽減によって効率のよい運動訓練ができるので、運動発達が促進・加速されることを十分期待できます。また、幼児期早期からボツリヌス治療を長期間行った場合、学童期に整形外科的手術を受ける可能性を約1/3以下に減らすことができます。
例えば尖足や股関節が開きにくい(ハサミ足)などの異常姿勢があると、上手に立てないばかりか、数年後には尖足拘縮や股関節亜脱臼を生じ、整形外科的手術を余儀なくされます。ところがボツリヌス治療を行えば、1~2週後にはかかとを着いて立つことや足を広げて上手に立つことが容易に可能となります。
重症肢体不自由児の場合では、首筋や脊椎の捻転・そり返りのため、呼吸障害、頻回嘔吐、側彎変形や疼痛による睡眠障害などをみる場合があります。ボツリヌス治療はこのような症状にも効果的で、首筋や脊椎の姿勢を改善し、呼吸の安定、疼痛の軽減や側彎変形の抑制などが得られます。また、着替えなどの介護負担を減らすことができます。
このように、ボツリヌス治療は、脳性麻痺における姿勢運動機能の改善だけでなく、さまざまな苦痛を軽減させ全身状態を改善させる緩和ケア的効果や介護負担の軽減においても有用です。
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【Q2】ボツリヌスは、からだに対してどのように働くのですか?
【A2】
この治療では、痙縮を軽減したい筋肉へボツリヌスを直接筋肉内注射します。筋肉内に投与されたボツリヌスは、ただちに筋肉に入りこんでいる運動神経に吸収され、数日後には運動神経を麻痺させます。その結果、注射した筋肉だけ緊張をゆるめます。ただし、効果は一時的で、通常2~4ヶ月後には消失しますので、長期間治療する場合には反復して注射する必要があります。
また、投与されたボツリヌスが血液の流れにのって、全身の運動神経を麻痺させることはありません。
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【Q3】「ボトックス」とは何ですか?
【A3】
「ボトックス」とは、わが国で販売認可されている唯一のボツリヌス注射薬の商品名です。現在100単位製剤と50単位製剤が販売されており、ちなみに下肢治療の上限量は200単位となっています。
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【Q4】副作用はないのでしょうか?
【A4】
用法・用量を遵守すれば重篤な全身の副作用は極めてまれで、比較的安全な治療です。投与量が多すぎる場合には、過剰効果によって脱力しすぎてしまい、運動機能が悪化することがあります。また、もともと呼吸・嚥下障害をもつ重症心身障害児に首の筋肉を治療する場合、さらに呼吸・嚥下障害が悪化して、呼吸不全や誤嚥性肺炎を誘発することがあります。その理由は、ボツリヌスが、咽頭や喉頭の筋肉へも広がって浸潤し、いっしょに麻痺させるからです。
ただし、これらの副作用は注射量を加減することによって予防できますし、もし出現しても数週間で自然消失しますので、永続することはありません。
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【Q5】実際どのように治療するのですか?
【A5】
治療すべき筋肉は担当の理学療法士と協議して決定します。1回の治療で10ヶ所前後へ注射することになりますので、非協力的な小児の場合、心的外傷を軽減しかつ安全に行うために、恐怖感などをやわらげる鎮静薬の使用が望ましいと思われます。
治療後の理学療法に関しては、痙縮の改善に応じて柔軟に訓練方法や訓練頻度を変更することが望まれます。また、適切な評価法を用いて正確に治療効果を検証することが重要です。
【神経小児科・神経内科 根津 敦夫】
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【Q】胃瘻の長所と短所を教えて下さい。
【A】
経管栄養を3~6ヶ月以上行われ、さらに長期的に必要と判断された患者さんは、その時点で原則的に胃瘻が選択されます。その理由として、経鼻胃管の最大の欠点である①先端位置の誤認から生ずる誤嚥性肺炎などの危険性、②経鼻胃管挿入時の苦痛、が胃瘻にはないからです。すなわち、「医療的危機管理」と、患者さんのさまざまな苦痛を最小限にしなければならないという「緩和ケア・緩和マネージメント」の観点から、最近はいたずらに経鼻胃管栄養を長引かせるのは賢明でない時代になっています。下記の表に示したように、その他にも点についても両者を比較すると、胃瘻栄養が優れていることがよくわかります。
| 経鼻胃管の特徴 |
胃瘻 |
・短所
- 自己抜去される
- 咽頭・喉頭の刺激で唾液が増える
- 咽頭・喉頭の刺激で嘔吐反射が起こる
- 外見の悪さ
- 顔面の絆創膏かぶれ
- 摂食・嚥下訓練時じゃまになる
- 挿入が困難な場合がある
- チューブがつまりやすい
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・長所
- 左記1~8の問題が解決される
- ミキサー食や寒天を加えた粘度の高いものも注入でき、食後の嘔吐が軽減できる
・短所
- 胃瘻の漏れ(特に、腹が張っているとき)
- 胃瘻部の肉芽や皮膚炎
- 胃がチューブで固定されるため、胃の動きが低下し、栄養剤の通過が遅れる可能性
- 胃がチューブで固定されるため、胃食道逆流症が悪化する可能性
- 先端の十二指腸への移動によるダンピング症候群(栄養剤注入後の低血糖症状)
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胃瘻の造設は、骨格変形がないうちには経皮内視鏡的胃瘻造設術によって簡単に行えます。しかしながら側わんなどの骨格変形が生じた後には、腹腔鏡下胃瘻造設術の方が安全に行えます。
胃瘻の漏れがあるときは、①栄養剤注入前に、胃内の空気を抜く、②半座位の姿勢、③筋緊張の軽減、④栄養剤のトロミを強くする、⑤定期的にバルーン水量の確認をする、などを行って下さい。
胃瘻チューブが抜けた場合には、すぐに再挿入しなければ、半日~1日で穴はほとんどふさがってしまいます。再挿入できない時は救急受診して下さい。
【神経小児科・神経内科 根津 敦夫】